INTERVIEW インタビュー記事

研究が事業になるまで。JIRCASの研究者たちはどう自ら起業に踏み出したのか

ShrimpTech JIRCAS株式会社 代表取締役社長(CEO)/国際農林水産業研究センター(JIRCAS)水産領域 目的基礎研究代表(プロジェクトリーダー)マーシー・ワイルダー(Marcy N. Wilder)

アメリカ合衆国・マサチューセッツ州・ボストン市生まれ。1987年ハーバード大学化学科卒業。1987年、文部省国費留学生として本格的に来日。1993年、東京大学大学院農学系研究科水産学専攻博士号取得。1994年農林水産省入省、国際農林水産業研究センター 企画調整部・水産部に配属。エビの生理生化学・養殖技術開発に従事し、ベトナムでのODAプロジェクトに携わった経験を持つ。令和2年度日本水産学会賞、2023年度日本農学賞並びに読売農学賞受賞。2022年、合同会社ShrimpTech JIRCASを設立し、2023年7月に株式会社化。

ShrimpTech JIRCAS株式会社 取締役 最高技術責任者(CTO)/国際農林水産業研究センター(JIRCAS)水産領域 主任研究員姜 奉廷(カンボンチョン/Kang Bong Jung)

韓国・釜山市生まれ。2001年東義大學校自然科学大学生物学科卒業、2003年同大学院で生物学修士号取得。文部科学省国費留学生として2004年に来日し、2008年岡山大学大学院自然科学研究科博士号取得。研究分野は、甲殻類(エビ)の生理生化学、養殖技術開発。在学中にマーシー氏の論文に触れたことをきっかけに直接連絡を取る。2009年よりJIRCASに参加し、エビ成熟メカニズムの基礎研究と成熟・産卵の新技術開発を行う。

国際農林水産業研究センター(JIRCAS) プログラムディレクター(情報・戦略)大森 圭祐(おおもり けいすけ)

農林水産省傘下の法人で一般職としてODA事業に携わり、2008年にJIRCASへ移籍。筑波大学大学院の社会人博士課程で学位を取得した後、農村開発領域の主任研究員を経て、企画連携部、情報広報室へ。産学官連携・人材育成を担当する中で、社会実装プロジェクトの構想を提案し、ShrimpTech JIRCASのベンチャー認定規程の設計を主導した。博士(農学)。

つくばスタートアップパーク コミュニティマネージャー/株式会社しびっくぱわー 代表取締役社長堀下 恭平(ほりした きょうへい)

1990年熊本県生まれ、つくば市在住。筑波大学2年次にコミュニティカフェを創設。全国60自治体以上の行政計画を策定、Tsukuba Place Lab、up Tsukuba、つくばスタートアップパーク、常陸多賀駅前 晴耕雨読を運営。令和元年度茨城県知事表彰 産業振興 受賞。

※肩書は2026年5月時点のものです。
聞き手:株式会社しびっくぱわー 代表取締役社長 堀下恭平
※本インタビューでは、スタートアップとベンチャーを同義語として扱います。

かつて、「研究成果を自分で事業化していいのだろうか」という迷いを抱えながら、それでも「自分の研究を社会に届けたい」と考えていた研究者がいました。当時は、公的研究機関の研究者が自ら事業を行うことには慎重であるべきだという考え方もあったといいます。

国際農林水産業研究センター(JIRCAS)水産領域の目的基礎研究代表、マーシー・ワイルダーさんは、30年以上にわたってエビの研究に向き合ってきました。海水を使わず、内陸でもバナメイエビを育てられる閉鎖循環式の陸上養殖技術を開発し、民間企業との連携を通じて社会実装も進めています。水産庁の資料によれば、日本はエビの多くを輸入に頼っており、マーシーさんは、その構造の中で国内生産の可能性を探ってきました。

そうした取り組みを続ける中で、マーシーさんの中には「自分も事業としてやりたい」という思いが強まっていきました。一方で、研究者という立場上、オブザーバーとして見守ることしかできないもどかしさも感じていたといいます。

転機は、2020年前後に訪れました。2019年の科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の改正や、JIRCAS内の認定・支援規程の整備を背景に、制度の具体的な運用をかたちにしていった支援者の存在が重なり、2022年、JIRCASの内部規程に基づき認定された初のベンチャー企業として、ShrimpTech JIRCAS株式会社が設立されます。

今回は、CEOのマーシーさんと、CTOの姜奉廷さん、そしてJIRCAS側でベンチャー認定規程の設計を主導した大森圭祐さんの3人に、研究が事業になるまでの道のりを聞きました。

研究者はどんな迷いや葛藤を経て起業に踏み出したのか。JIRCASでは研究成果の社会実装をどう制度として支えていったのか。そして、ShrimpTech JIRCASは研究成果をどのように社会へ届けようとしているのか──3つの視点から、その歩みをたどります。

※研究成果の事業化に関する制度や運用は、研究機関や時代背景によって異なります。本記事では、JIRCASにおける実践事例を紹介しています。

01. なぜJIRCASからベンチャーが生まれたのか──社会実装プロジェクトと2つの構想の出会い

堀下

まず大森さんにお伺いしたいのですが、そもそもJIRCASというのはどんな研究機関なのか、改めて教えていただけますか。

大森さん

農林水産省の下にいくつか国立研究開発法人があるのですが、JIRCASはそのうちの一つです。主に開発途上地域の食料安全保障や気候変動問題に貢献するため、現地の研究機関や大学と国際共同研究の枠組みで試験研究を行っています。

堀下

大森さんご自身は、どういった経緯でJIRCASに来られたのでしょうか。

大森さん

私はもともと研究職ではなかったんです。農林水産省傘下の法人で、一般職としてODA事業に携わっていました。その法人の海外事業部がJIRCASに承継されたことを機に、2008年にJIRCASへ移りました。

当時はまだ学位も研究職の肩書きもなかったのですが、研究者と一緒に仕事をするうちに、「やっぱり学位を取らないといけないな」と思い、筑波大学大学院の社会人博士課程に進学しました。

2018年に学位取得後は研究の現場を離れ、管理運営や産学官連携、人材育成を担当するようになりました。そこでさまざまな研究者と対話するなかで気づいたのが、5年ごとの中長期計画の切り替えのタイミングで、せっかくかたちになりかけた研究成果が埋もれてしまうことがあるということでした。

特に農林水産分野、とりわけ開発途上地域を対象とした研究では、研究開発から社会実装までを5年間の計画期間内で完結させること自体に難しさがあると感じるようになりました。完成間近でも、次のプロジェクトに引き継げないケースがある。それは避けたいと思い、社会実装までを視野に入れたプロジェクトを提案しました。

堀下

なるほど。その時点ではまだ、ベンチャーの立ち上げは想定していなかったんですか?

大森さん

そうなんです。当初は、研究成果を民間企業につないでいくような支援をイメージしていました。ちょうどその頃、マーシーさんからも、閉鎖循環型の陸上養殖技術を、もう少しビジネスとして展開したいという話が出てきていたんです。

その2つの動きが重なったタイミングで、当時の幹部から「組み合わせてみたらどうか」という意見をいただいて、一つのプロジェクトとして動き始めました。

堀下

現場の声を拾いながら、「できるかもしれない」とかたちにしていく、しっかりとした土壌があったということですよね。

単純に「技術があるから起業しよう」というトップダウンでもないし、「制度をつくってほしい」という現場の要望だけでもない。研究の蓄積や法改正、そして「自分たちでやりたい」という思いが重なったタイミングだったんですね。

マーシーさん

私は、考えていたことを正直に提案しただけだったのですが、本当にありがたいことに、こうしてベンチャー設立につながっていきました。

大森さん

「一緒にやりましょう」という方針が示された時、マーシーさん自身も、あまり違和感はなかったんじゃないですか。

マーシーさん

なかったですね。法改正もありましたし、研究所の考え方も少し変わってきていた。ベンチャー設立を具体的に検討しやすい環境が整ってきた時期だったと思います。

02. 30年以上エビを研究してきた研究者が、「起業」に踏み出すまで

堀下

マーシーさんにもお聞きしたいのですが、そもそもの来日のきっかけから教えていただけますか。

マーシーさん

私が初めて日本に来たのは、1985年です。ハーバード大学でオーケストラに入っていて、つくば万博の会場で演奏するために来日しました。7月4日、アメリカの独立記念日に、この近くの万博公園にステージがあって、そこで演奏したんですよ。まだ大学3年生になる前の夏休みでした。

その時にホームステイをして、「日本に留学したい」と思うようになり、当初は医学の道も考えていたのですが、進路を変え、当時の文部省の国費留学生として1987年に本格的に来日しました。

その後、東京大学大学院ではエビの研究を始めたのですが、甲殻類の生理学そのものが科学的におもしろかったですし、養殖という分野にも大きな可能性を感じていたんです。

堀下

来日した時点から、いつか起業したいという思いはあったんですか。

マーシーさん

日本に来た頃から、将来は社会の役に立つような、ビジネス的なこともやってみたいという気持ちは少しありました。研究も好きだったんですけど、早い段階で民間企業の方々と出会う機会があったことも大きかったと思います。ただ、公的研究機関の研究者でしたから、当時の立場では、自分で事業化することは難しかったんですよね。

JIRCASに入ってからは、ベトナムでのODAプロジェクトにも携わりました。貧困農家を対象に、エビの種苗生産技術の開発と普及に取り組み、年に1〜2回、1カ月ほど現地に滞在していました。

その後、2000年代に入ると民間企業との連携も本格化し、エビの陸上養殖技術の研究開発を進めていきました。そこから、海水を使わず、内陸でもバナメイエビを養殖できる閉鎖循環式システム「ISPS(Indoor Shrimp Production System)」へと発展していったんです。

堀下

研究者としてのキャリアの中で、事業化への思いはどう変化していったんですか。

マーシーさん

実際に人に食べてもらえることへの喜びを知ってから、研究として開発するだけでなく、自分自身が中心になって届けたいと思うようになりました。

長い間、さまざまな民間企業の方とご一緒してきて、自分の技術が広まっていくのは本当にありがたかったんです。ただ、自分はあくまでオブザーバーとして会議に出るところまでだった。そのことに、少し悔しさもあって、自分でも事業としてやってみたいと思うようになりました。

堀下

ご自身で事業化したいという思いを持ち続けていたというのは、いろんな研究者の方とお話ししていても、いい意味でめずらしいなと感じます。研究成果をもとに、外から経営人材を迎えるケースも多い中で、すごくユニークですね。

マーシーさん

半分自信がない、半分自信がたっぷりある、みたいな感じでやってきました。そもそも陸上養殖は、当時は「本当にできるのか」と懐疑的に見られていた時期もありましたから。でも、やってみたいなと。

堀下

起業にあたっては、心理的なハードルもあったのではないですか。

大森さん

確かに。マーシーさん、起業する前までは、研究者が自分で事業をやってはいけないと思ってたんですよね。

マーシーさん

そうなんです。

堀下

起業できるようになったとしても、研究成果を事業化することには、なお慎重な空気がありますよね。研究者として、簡単には踏み切れない感覚は自然だと思います。

大森さん

当時は、研究者が自ら事業に関わることに対して、まだ慎重な空気もあったんです。マーシーさんからは何回も「大丈夫なんですか」「本当ですか」と聞かれました。

マーシーさん

当時は、難しい状況もありました。でも法改正もあって、10年前には想像できなかったようなかたちで、ベンチャー企業を立ち上げることができました。研究所には本当に感謝しています。自分たちの手で成果を届けられるようになったことは、素直に嬉しいです。

03. 制度のないところから──JIRCASでベンチャー認定規程を整備した1年間

堀下

お二人の構想がかみ合ったあと、実際にベンチャーを立ち上げるまでには、制度面でかなりのハードルがあったのではないでしょうか。

大森さん

マーシーさんは、プロジェクトが始まった1年目にベンチャーを立ち上げたいという希望を持っていました。法改正で道は開けていましたが、JIRCASとしてベンチャーを認定・援助するための具体的な仕組みはまだ整っていなかったんです。しかも、こうした規程を新設すること自体が初めてで、所内もかなり慎重でした。

まず、つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアムの会員団体でもある物質・材料研究機構(NIMS)のベンチャー支援制度を参考にして、JIRCAS版のベンチャー認定・援助規程をつくりました。あわせて出資規程も策定し、兼業規程なども全部読み込んで、顧問弁護士の意見も踏まえて修正を重ねました。

ちょうどコロナ禍の時期でもあり、オンラインのスタートアップセミナーに参加したり、ベンチャーキャピタルの方々と個別に意見交換を重ねたりしながら、制度設計を進めていきました。

うちは他の国立研究開発法人と比べて意思決定の距離が比較的近い面もあるんです。それもあって、2021年9月にベンチャー認定・援助規程が制定されました。およそ1年で、具体的な運用のかたちが見えてきた感じです。

堀下

1年でそこまで行くのは、結構とんでもないスピード感だと思います。他の機関では本腰入れてから2年半くらいかかるケースもありますから。

マーシーさん

それがなければ、私たちのベンチャー企業は立ち上がっていないですからね。

大森さん

2022年2月には、マーシーさんと姜さんを中心に、合同会社としてShrimpTech JIRCASが設立されました。JIRCASの知財をベンチャーに活用してもらい、その使用料をさらに次のベンチャー支援に回していく。そういった循環ができればと考えています。

マーシーさん

もちろん、研究所の予算は税金に由来するため、ベンチャー企業側の資金には一切使えません。そのため、最初はホームページもつくれないような状態でしたが、その後、投資家の方々にもご支援をいただいて、2023年7月に株式会社になりました。

04. エビの養殖技術に新しい選択肢を──研究と社会実装、その先へ

堀下

姜さんにもお聞きしたいのですが、マーシーさんの研究チームに加わったきっかけを教えていただけますか。

姜さん

岡山大学でエビの生態と生理学の研究をしていたのですが、甲殻類の分野では、文献を調べる中でマーシーさんの論文をよく読んでいました。ある時、つくばに来る機会があり、近くにJIRCASがあると知って、「ちょっと会えませんか」とメールを送ったのが最初の出会いです。その後、2009年にチームに加わりました。

堀下

論文がつないだ出会いなんですね。姜さんが担当されている技術について、もう少し教えていただけますか。

姜さん

エビの目には「眼柄」と呼ばれる部分があって、ここから脱皮や生殖をコントロールする抑制因子(脱皮抑制ホルモン、卵黄形成抑制ホルモンという)が出ています。従来の養殖では、この卵黄形成抑制ホルモンの働きを取り除くために眼柄を切り取るという方法が広く使われてきました。ただ、眼柄には産卵を抑えるホルモン以外にもエビの代謝や体色を制御する大事な物質が含まれているので、切ってしまうとエビの体にかなりの負担がかかります。

そこで、私たちが取り組んでいるのは、眼柄を切らずに、卵成熟を抑制するホルモンだけを選択的に抑え、計画的に親エビを産卵させる技術の開発です。

堀下

動物福祉の観点から、こうした技術に注目が集まるケースもあるんですね。

マーシーさん

海外では、倫理的な方法で養殖しているかどうかを認定条件に含める動きも出てきています。私たちとしては、そうした流れも見据えながら、科学的な根拠に基づいた代替技術の研究を進めています。食べる人たちに安心して受け取ってもらうためには、健康面だけでなく、どのように生産されているかという過程も含めて納得してもらえることが大事だと考えています。

堀下

ShrimpTech JIRCASの今後の事業展開についても聞かせてください。

マーシーさん

今はコンサルティングと受託研究を中心に事業を進めていて、わりと軌道に乗ってきています。エビは生き物ですから、環境によって条件が異なります。これまで培った経験をいかして、施設ごとの状況に合わせて、クライアントごとに技術的な支援を行っています。コンサルティングと受託研究をやりながら経営に慣れていくというのが、これまでのスタンスでした。

次のステップとしては、国内でのハッチェリーセンター(稚エビの生産施設)の立ち上げを計画しています。国内でも陸上養殖への参入事例が増えていて、稚エビの需要が高まっています。一方で、現在は多くの事業者が稚エビを輸入に頼っていて、国内で安定供給できる施設がまだ十分ではありません。まずはハッチェリーを立ち上げ、稚エビの生産・販売を行いながら、技術もパッケージとして提供していきたいと考えています。国内で安定供給できる稚エビの生産体制をつくることが、今の目標です。

堀下

大森さん、最後にJIRCAS全体としての動きも教えていただけますか。

大森さん

マーシーさんの事例をきっかけに、さまざまな相談や声がけをいただくようになりました。設立から約1年後には、JIRCASから2号目のベンチャー企業も生まれています。

制度設計を進める中で、外部の支援機関や投資家とのつながりもできてきました。認定のための審査委員会には外部有識者を入れる必要があるのですが、その過程で日本政策投資銀行の方とも知り合い、今も関係が続いています。こうした人とのつながりは非常に大事だと思っています。

JIRCASは、他の国立研究開発法人に比べると規模が小さい分、意思決定が早く、小回りも利きます。起業を考える研究者にとって動きやすい環境だというのは、JIRCASの強みかもしれません。

堀下

先達を見て、「もしかしたら自分のシーズも使えるんじゃないか」「この研究、ビジネスに合うんじゃないか」と思ってくださる方が増えてくるかもしれませんし、そういう時に一つの選択肢になれるといいですよね。異なる研究分野やバックグラウンドを持つ人が関わっている点も、JIRCASの特徴のひとつに見えますね。

異なる専門性を持つ人たちが交わりながら挑戦が生まれていくのは、最近のスタートアップ支援の流れとも重なる気がしています。

つくば市も2018年にスタートアップ推進室を立ち上げ、日本の自治体の中でも比較的早い段階から取り組んできました。今では多くの自治体がスタートアップ支援を掲げるようになりましたが、つくば市は研究所が集積する地域特性をいかし、スタートアップを育てて事業や雇用を生んでいくという大義が明確なんですよね。

小さいからこその動きの速さは、JIRCASにも通じるものがあるのかもしれません。つくば市のスタートアップ推進室 室長の屋代さんも6年間この領域に取り組んでいて、全国のスタートアップ支援関係者とのネットワークを築いてこられた方です。そういう人たちがいるからこそ、つくばのエコシステムは少しずつかたちになってきているんだと感じています。

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本サイト「TSUKUBA STARTUP JOURNEY」は、
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この取材を通じて見えてきたのは、研究が事業になるまでには、突然ではなく、小さな対話と行動の積み重ねがあるということでした。

もちろん、ShrimpTech JIRCASのケースは一つの実践例です。現在地をひとことで言えば、研究成果をもとにした技術支援と受託研究を担いながら、将来的には稚エビの生産基盤づくりを見据えている段階にあります。完成された成功事例というよりも、研究者たちが試行錯誤しながら、研究と社会実装のあいだを行き来している途中にある取り組みともいえるでしょう。

私たちがスーパーでエビを手に取るとき、その裏側には生産現場や研究者たちの小さな積み重ねがあります。

埋もれてしまいそうな成果に目を向け、制度のないところから仕組みをつくっていった人。研究者としての葛藤を抱えながらも、自ら社会に届けようとした人。そして、論文を読み、「会ってみたい」とメールを送ったことから、この挑戦に加わった人。

その始まりはどれも、「やってみたい」「会ってみたい」という気持ちを、まず身近な誰かに伝えるところからだったのかもしれません。
みなさんの身近にも、まだ社会につながっていない知識や技術、アイデアがあるかもしれません。まず誰かと話してみることも、未来を動かす一歩になるのではないでしょうか。

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