INTERVIEW インタビュー記事

スタートアップの活躍ステージを全国へ “スタートアップ都市推進協議会がもたらす次への出会い”

福岡市 創業支援課 創業推進係長松尾 彩佳(まつお あやか)

北九州市 スタートアップ推進課 スタートアップ成長担当係長瀬下 薫里(せした かおり)

別府市 一般社団法人別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK 地域ビジネスプロデュースチーム コーディネーター宮﨑 恭平(みやざき きょうへい)

熊本市 起業・新産業支援課 課長野口 信太朗(のぐち しんたろう)

つくば市 スタートアップ推進室 室長屋代 知行(やしろ ともゆき)

集合写真:左から屋代、宮﨑さん(別府市)、松尾さん(福岡市)、瀬下さん(北九州市)、野口さん(熊本市)
聞き手:つくば市スタートアップ推進室 室長 屋代知行
※本インタビューでは、スタートアップとベンチャーを同義語として扱います

我が国のスタートアップ支援は、政府が2022年11月28日に「スタートアップ育成5か年計画」を決定しました。これを契機に人口減少対策や地域産業の活性化に取り組む地方自治体では、地方創生への有効な施策として、各地域でもアントレプレナーシップの醸成やスタートアップ支援の取り組みが生まれてきています。
一方で、地方自治体の中には2013年から都市づくりの重要なファクターとして、スタートアップ支援に積極的に取り組んでいるところがあります。それが福岡市長を会長とし、つくば市も加盟する「スタートアップ都市推進協議会」です。
今回は、つくば市がスタートアップ支援で連携しているCIC(Cambridge Innovation Center)の日本2番目の拠点であるCIC Fukuokaで開催されるVenture Café Fukuoka Thursday Gatheringを舞台に、“スタートアップ×都市づくり×自治体連携”の今後や2026年1月26日に開催されるスタートアップ都市推進協議会の最大イベント「JAPAN STARTUP SELECTION – the 12th Edition -(以下JSS)」について福岡市、北九州市(福岡県)、別府市(大分県)、熊本市(熊本県)の皆さまとお話します。

01. スタートアップ都市推進協議会との出会い

屋代

皆さま先ほどのイベントはお疲れ様でした!

全員

お疲れ様でした!

屋代

・・・って、記事を読んでいる人にはいきなり過ぎて何のことかさっぱり分からないと思うのですが(笑)
今日はですね、私は福岡市にいます。いつもならつくば市内とかCIC Tokyoで取材なんですけど今日はワンフクオカビル内にある「CIC Fukuoka」です!
対談を始める前に私がなぜ福岡にいるのかを少しお話ししますね。まず、つくば市は「スタートアップ都市推進協議会(以下スタ協)」というスタートアップ支援でまちづくりや市民生活を向上させようとする自治体アライアンスに加盟しています。この発端は福岡市の高島市長です。2013年に発足して、今は12市区で活動中です。その12市区とそれぞれで活動するスタートアップが東京で一堂に会する機会があります。「JAPAN STARTUP SELECTION(以下JSS)」です。2026年1月26日の開催が第12回目という年男・年女的な記念回です。そのプロモーションの一環で、今日(2025年12月18日)のベンチャーカフェ福岡Thursday Gathering #51で「地域発アントレプレナー人材育成戦略」をテーマに福岡市の松尾さん、北九州市の石原さん、別府市からB-biz LINKに出向中の宮﨑さん、熊本市の野口さん、そして私の5人でトークセッションを先ほど開催しました。
実は今年の1月のJSS#11の前日につくばスタートアップパークでも前夜祭としてトークイベントをやったのですが、福岡市、別府市、熊本市、鹿児島市の皆さんが来てくれて、もう本当に嬉しくて、その恩返しじゃないですが今度は私が九州に行こうと。つくばがいない方がOne Kyusyuとしてまとまりあるイベントになったかもしれませんが、つくばというノイズが入るのも有りかなと。
ということで前置きが長くなってしまいましたが、そのスタ協は単なるアライアンスではなく担当者同士がスタートアップ支援という長い道のりを互いに支え合う「旅の仲間」のような存在だと私は思っているんですね。だから今回のTsukuba Startup Journeyでもぜひ記事を書きたいと思いました。この機会を逃すともう次はいつになるんだ?ってくらいチャンスですから逃すわけにはいきません!笑
みなさんのご協力に感謝です!
そして今回の対談では北九州市はイベントに登壇した石原さんから瀬下さんにバトンを受け継いでいまして、後のメンバーは変わらずです。では早速、始めますね、よろしくお願いします!

全員

よろしくお願いします!

屋代

まず「スタートアップ都市推進協議会との出会い」というところになるんですけれども、福岡市は先ほど私が簡単にお話ししたように、特に先頭に立ってこの協議会を引っ張って来られています。
では熊本市の野口さんから、スタ協に入るきっかけや入った後の変化というかメリットのようなところを聞かせてください。

熊本市
野口

スタ協が立ち上がるときに、多分福岡市さんからお話いただいているんですよ、うちの方にも。その当時はまだ今の私がいる部署ができる前です。

福岡市
松尾

そうでしたね。

熊本市
野口

当時は、スタートアップ支援自体がまだそんなに一般的じゃなかったので、熊本市としてもかなり慎重だったと思うんです。全国の自治体と同じように、中小企業支援の延長線上でスタートアップを支援する、という位置づけでしたし、「スタートアップ推進」みたいな言い切った打ち出しをすることには、慎重だったんじゃないかと。ただ一方で、福岡市の高島市長と我々の大西市長の関係性を考えると「いつかは入るべきだろう」と、そういう話になっていたという経緯があったと聞いています。
その後、熊本地震からの復旧・復興も一段落した時点で、スタートアップ支援の部署が5年前に立ち上がり、過去の資料とかを色々確認していたときに、「何これ?」みたいな感じで、スタ協の資料が出てきたんですよ。スタ協が立ち上がるタイミングで、福岡市さんからお誘いいただいてました、みたいな記録が残ってて。
それを見て、「いや、これ入んないとダメでしょ」って話になりました。スタートアップ支援部署ができたものの、正直、最初は何から手を付けていいかも分からないし、目立ったこともまだ何もできていない、みたいなタイミングだったので。だったらまず、スタ協に入るところから始めたほうがいいんじゃないか、ということで、参加することになったんです。

福岡市
松尾

結構レアケースですよね、ボトムアップ型は。ほとんどが首長同士のつながりのトップダウン型が多いイメージです。

熊本市
野口

ボトムアップ型で進めてきたので、正直、予算要求も結構大変でした。ただ、財政当局の中にも「何かしら新しいことに取り組まないといけないよね」という空気感が少しずつ出てきていたのもあって、スタ協の負担金についても、財政や市議会の理解も得られることができ、気がつけば、今年で4年目になります。
それで、実際に加入して何が良かったかっていうと、本当に「何していいか分からない」状態からのスタートだった中で、先行して取り組まれているスタ協加入の県や市の事業は、ものすごく参考になったという点です。もちろん、全部をそのまま真似するわけじゃなくて、「じゃあ熊本市だったら、もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないか」とか「ここはアレンジできそうだよね」という形で、自分たちなりに工夫しながら取り入れてきました。そういう意味でも、スタ協に入れたことは、本当にありがたい機会だったなと感じています。

屋代

それは嬉しいですね。つくば市も古株ですが、我々の事業が何か参考になっているのかな?という思いは常々持っていました。
でもボトムアップだったことには驚きました。だってここのトップは皆仲良いので。そういう仲の良さはスタートアップ界隈ではとても重要だと思います。別府市はどちらかというとトップダウン型ですか?

別府市
宮﨑

別府市の場合はボトムアップですね。今の市長は3期目なんですけど、7年前の2期目立候補時の市長公約に「ツーリズムバレー構想」というのがありまして、我々からすると当時は謎だらけでした。これは何のことを言ってるんだみたいな(笑)。この「ツーリズムバレー」の取組こそが、起業・創業支援、スタートアップ支援の大きなターニングポイントになりました。とはいえ、温泉観光地である別府が、何をしていくか模索する中で、多くの先進自治体に視察に行き、たくさんのことを勉強させてもらいました。その自治体の一つが福岡市で、スタ協の取組を聞き、すぐに予算要求しました。あとは、トップ同士の関係もあり、スタ協にも自然な流れで加入したというところです。
やっぱり皆さんの自治体の規模に比べたら我々、人数少ないですし、財政規模も小さいです。少ない中でやれることって限られていて、スタ協のおかげて色々と学べたりできます。今日のイベントももちろんそうですけど、僕ら単独でトークセッションなんて絶対できない話ですけど、どうですか。

屋代

そんなことないですよ!ツーリズムバレー構想というか、温泉を絡めたイベントとか絶対キラーコンテンツじゃないですか!でも熊本市と同じようにスタ協の他自治体を参考にされたり、イベントの機会を生かしていただけるのは嬉しいですね!
では、一番若手の北九州市はどうですか?つくばからすると政令市の第一号ですし、産業の歴史が深いのでスタ協に入った経緯は興味あります。

北九州市
瀬下

うちはよくあるトップダウン型です。

屋代

それは何となく市長同士の雰囲気でわかったんですけど、関東の人間からすると勝手なイメージですみませんが、北九州と福岡っていうと、ライバルみたいな感じで見てしまうんですよね(笑)。

熊本市
野口

もう、だってもともとはね、もうバチバチでしょ(笑)

北九州市
瀬下

そんなことないですよ(笑)!もちろん同じ県内の政令指定都市同士ですから、もしかしたら難しい面もあったかなと思うんです。でも武内市長が2023年に就任されてすぐの1週間後に高島市長とトップ会談が開かれて方向性決定っていう早さでした。

屋代

フットワーク軽いですね!

北九州市
瀬下

そうなんですよ。でもトップ会談の事務側としたらこのスピード感に焦っただろうなと(笑)。そのトップ会談の中で、いろんな連携やっていきましょう!として、どんどん起業家を生み出していくのは大事だよねと、お互いにそこを支援していくの大切だよねっていうところでご提案いただいて「ぜひやろう!」と。我々はまだ駆け出しなんですね2020年ぐらいから本格的に始めたんで。そんな中でいろいろ探りながらやってたところに福岡市さんからのご提案があったので入会させていただきました。

福岡市
松尾

ぜひやりましょうというところで。北九州市さんは全然産業構造が違うんで、スタートアップ支援でも互いに補い合えるんじゃないかっていう前提のもとに「スタートアップ支援を一緒に」っていう話になりました。

屋代

やっぱり北九州市さんといえば工業都市っていう教科書にも載るような歴史があるわけじゃないですか。そこはスタ協としても魅力はあると思いますよ。

福岡市
松尾

例えば福岡のものづくり系DXのスタートアップさんから、協業先についてご相談があっても、サービス産業の街なので、協業候補となる地元企業さんが少ないんですよね。だからそんなときに北九州市さんに機会を求めさせていただけるのは大きなメリットです。

屋代

そうなるとスタ協に入って、ほかの自治体のそういう動きとかを見るとやっぱ勉強になるっていうことですね。

北九州市
瀬下

すごく勉強なります。我々は製造業や環境に強いとしてやってるんですけど、スタートアップをどうやって支援していけばいいのか、他の自治体がどういう支援をしてるのかっていうところは、とても参考にさせていただいています。それとスタートアップ支援だけじゃなくて市役所の内部調整とかも、皆さんどうやってるんだ?みたいなところはすごく勉強になって。

屋代

内部調整はいつも苦慮してますよ、ここでは話せませんが(笑)。
色々と学びがあるという意味では、福岡市さんはスタートアップ支援に限らず色々な事業でも先頭走ってるわけじゃないですか。でもその中で、これだけ数多くの加盟自治体が増えてきたら、逆に学びを得られたりすることってあるんですか?

福岡市
松尾

めちゃくちゃありますよ!例えばコロナのときに、スタートアップ支援施設を閉館させないといけないってなって。初めての事態だったんで、閉館期間中の入居スタートアップさんの賃料を免除するのかみたいな悩みに直面して。それこそ「つくば市さんにどうされてるんですか?」みたいなものをご相談させていただいたりとか。あとコロナの中でもチャレンジする人を応援できる施策が打てないかって話になったときに、つくば市さんで特定創業支援等事業をベースにされた補助金をお持ちですよね?登録免許税とかの。あれがめちゃくちゃいいってなって、言葉を飾らずに申し上げれば、真似させていただきました。
やっぱり自分の経験則の中でしか物事って考えられない中で、他の自治体さんの違う経験をされてる皆様からアイデアとか取り組みとかを教えていただけるのはすごくありがたいなって。いつも勉強させてもらってます。

屋代

それ以上に我々が参加したりするメリットの方が大きいですよ。そういった我々担当者同士の横の繋がりも1つのエコシステムだと思っています。でもやっぱりトップ同士が熱い想いで肩を組んでスタートアップ支援を推進する、これって担当者からしたらとても頼もしいことなんです。

02. スタートアップ支援は自治体だけじゃ無理!?

屋代

我々つくば市は2018年からスタートアップ支援をやっているわけですが、幸いにも実績や認知度が上がって来ています。しかし、実際に現場で感じているのは、先ほどのVenture Café Fukuokaでのトークテーマにもあったんですけど、スタートアップ支援は当然我々行政だけではまず無理だなってことです。これは、当然のことでもあるのですが、ビジネスの世界がメインステージになるので、やっぱり金融機関やVCなどのプレーヤーの存在が大きいと感じます。皆さんの中でもスタートアップ支援をやっていく中で当然課題も見えてきてると思うんですよね。そのあたりを少しお聞かせください。

北九州市
瀬下

スタートアップ支援は絶対に行政だけじゃできないなっていうところは常々思っています。スタートアップを成長させるために必要となる資金支援や伴走支援などを行政がどこまでできるかっていったら、補助金とかはできますけど、限界がありますよね。なので、民間や大学等も含め、まちぐるみで支援をするようにしています。北九州市はスタートアップや地元に対し、熱い想いを持っている人がいっぱいいて、みんなが顔が見える関係性なので、それぞれの強みを活かしながら、みんなで熱く支援をしていこう!と。あと、最近の行政の話で言うと、今年度ファンドに出資もしました。スタートアップからするともうちょっとVCさんからの資金支援とか多分望んでるんだろうなとは思うんですよね。

屋代

そういうときってVCさんとか、どこで出会ったりするんですか?東京エリアならまだしも、政令市とは言え、地方都市だと苦労されているんじゃないかと感じています。

北九州市
瀬下

そうですね、北九州市は認定VC制度があるんですよ。先行されている同じスタ協の浜松市さんを参考にさせていただいて。現在34社のVCさんに登録いただいているんですけど、そこで色々とお繋ぎさせていただいています。スタートアップ側からもVC側からも、繋がりたいというニーズがありますね。

屋代

我々の登録スタートアップ制度に似ていますね。スタートアップって定義がバラバラで公的な統計とかはないんですよ。それで「つくばにはどのくらいのスタートアップが活動しているの?」と聞かれたときに困ってしまったと。そうであれば、登録制度を作って登録してもらおうと。もちろんこれにはメリットもあって、例えば市のスタートアップ向け補助金は登録スタートアップに限定するとか。スタートアップ支援は支援機関も重要ですが、スタートアップそのものも巻き込むことが大切だと感じました。
別府市さんはどうですか?

別府市
宮﨑

直近の課題でいくと、ONE BEPPU DREAM AWARDというビジネスプラン発表会に学生がよくエントリー参加してくれるという成果があるんですが、言い方を変えると学生比率が高くなって、固定の色(特徴)が付いてきたってことですね。そして、事業を継続すればするほど参加者が固定的になるとか新規者は増えないとか。
それと結構県外市外からもビジネスプラン発表会にエントリーしていただいているんですが、地元の人のエントリーが少なかったり。それはそれで県外市外の人が地元を盛り上げてくれるのはありがたいんですよ。でも地元の熱量がちょっと下がってきてるなあっていう肌感は結構ありますね。

屋代

持続性はつくばでも同じですよ。補助金とかもそうですし、補助金使いたいタイミングもあるでしょうから。もう悩みというか、どうしようもないというか。

熊本市
野口

それは同じですよ。補助金だったり伴走支援だったり、制度としては色々あるんですけど、同じスタートアップが同じ年に、こっちとこっちの事業、両方とも採択されている、みたいなケースも実際にあったりします。もちろん、我々自身がまだ十分に掘り起こしきれていない、見つけきれていないという部分もあると思うんですけど、なかなか難しいところですよね。そういう中で、スタートアップと顔が見える関係性をつくっていくことの大切さは、すごく感じています。一方で、新しいプレイヤーがなかなか出てこない、そもそも見つけきれてない、という課題感を強く持っています。だからこそ、「既にいる人をどう支援するか」だけじゃなくて、「新たに生み出していく」というところを、これからどうやっていくかが大事だなと感じていて。そう考えると、地道かもしれないけど、アントレプレナーみたいなことが、やっぱ効いてくるんだろうなと思っています。今は、中学生とか小学生までは手が届いていなくて、高校生や大学生向けの取組からスタートしている状況ですが、本当はもっと若い世代からかかわっていく必要があると思っています。起業家そのものを全員が目指さなくてもいいと思ってまして、新しいことにチャレンジするとか、新しい価値を生み出していくとか、そういうマインドを持った人材を育てていく。そこにちゃんと力を入れていかないといけないんだろうな、と感じています。

屋代

やっぱりスタートアップ支援をやり始めてから感じるんですが、スタートアップってなかなか成功確率がない世界なんですね。でも、いろんな人にチャレンジして欲しいので、たくさん参加して欲しいっていうところがあるんですけども、だんだんそれができてくると、福岡市さんみたいに、高さのあるスタートアップでエコシステムを引っ張るみたいな形なると思ってるんですね。高島市長がスタートアップ支援で高さを言い出したのはここ数年ですよね?

福岡市
松尾

そうですね、高さにこだわるステージに来たのかなと。
スタートアップ支援の元々の出発点は、雇用と税収を生むっていう話の中でした。東京・大阪・名古屋といった都市が本気だしたら、かけれるリソースが全然違うんで、スタートアップ支援で水をあけられるっていう前提がある中で。スタートアップ支援に福岡市がどう取り組むのか、福岡市ならではの戦い方みたいなものは、ずっと命題として問い続けてるところです。
「ユニコーン」という言葉がありますが、「上場」と一緒で通過点に過ぎないのかなとは思うんですけど、ただ事実として、福岡でたくさん出てないよねと。もし突き抜けた起業家さんが生まれたら、その人をロールモデルとして、エコシステム全体のアントレプレナーシップを引き上げてくれるんじゃないかっていう仮説のもと、1社大きいスタートアップを生みたいと考えています。
例えば甲子園に出たいとして、そのための練習メニューを組むのに、甲子園出場経験者じゃないと見えてないことってあると思うんです。だから経験値ってすごく大事だと思っていて。とにかく1つ突出したスタートアップが生まれれば、福岡ってコミュニティがすごくしっかりしているので、そのノウハウとか、マイルストーンとか、どうやってそうなったのかみたいな経験値をシェアできるんじゃないかと思ってます。だから「とにかく1社を」と、成長の高さにこだわり始めたっていうのがあります。
ただなんか、裾野が一定できたから成長の高さに注力しようって言い出したら、今度はふと数年経って気づいてみると、新しい起業家さんが少なくない?みたいな振り子が今戻ってきていて。今は逆に、皆さんと同じく、裾野をどうやって広げていくのかみたいなところに、また揺り戻ってきてる気がしますね。

屋代

どうやって裾野を広げていくかって、おそらくそのネットワークを一番持ってるのは我々、行政かもしれないということをすごく感じてます。税金を使った予算事業ではなく、幅広い人脈というか。

福岡市
松尾

そうですね。行政は中立の立場として、いろいろな属性の方たちに横ぐしをさせるというか。

熊本市
野口

でも、その人脈って、スタートアップ支援7年生だからできる部分は大きいと思います。私自身も5年くらいこの分野にかかわってきて、ようやくある程度のネットワークができてきたという実感があります。ただ、やっぱり行政なんで、人事異動ってやっぱ避けられない。この点については、市長からもずっと言われてるんすけど、「この人脈やノウハウを、どうやって次に引き継いでいくんだ」と。スタートアップ支援の業務って、本当にやってみないと分からないことが多くて、かなり属人的な部分が大きいなと感じています。

福岡市
松尾

そうですよね、やってみないとわからないことってありますよね。振り子のように、再度、裾野に着目することになるとは思わなかったです。
あと、成長の高さだけじゃないよね?みたいな。まちを良くするみたいなところにスタートアップの力を借りていくっていう方向で、プレーヤーを育てるのも大事じゃないかと話していて。

熊本市
野口

だから、熊本市のファンドも、社会課題というか、もともとの地域が抱えている課題を一緒に解決していくことを意識した、セカンダリーのファンドになっているんですよ。熊本は今、TSMC関連で経済的にはプラスの動きもかなりある一方で、交通渋滞が増えたり、水の問題だったりとか、負の側面も出てきています。そういった課題に対して一緒に解決できるようなスタートアップをセカンダリーマーケットの力も使いながら外から引っ張ってきて、熊本に誘致していく。熊本でゼロからスタートアップを1社生み出す、というやり方だけじゃなくて、すでに活躍しているスタートアップを外から来ていただき、地域の課題解決に一緒に取り組んでもらう。さらに実証実験もセットでやっていく。そういうことを組み合わせて進めていこう、ということを今まさに考えています。

福岡市
松尾

そこでつくばですごいなと感じたのが市と県でエコシステムを作っていること。アカデミアと支援機関を混ぜて。「つくばアントレプレナー育成プログラム BizDev講座」は、他の地域でも参考になると思います。そういう、地域で眠ってる企業などを混ぜる、放っておくと混ざらない人たちを混ぜ合わせるっていうのが、多分行政のできることの1つかなって思います。

北九州市
瀬下

スタートアップと企業をまぜるっていう取り組みでいうと、「地域課題×スタートアップ」の取り組みを昨年度から始めました。それは起点としてはスタートアップではなく、地元企業とか、行政側になるんですけど、地元企業や行政が抱える課題を解決してくれるスタートアップを全国から募集して、スタートアップの力で課題解決をしていこうとしています。北九州市も課題はたくさんあるんですよ。少子高齢化だったり、人口減少だったりとかもいっぱいある中で、そういった課題とかチャレンジに対して、スタートアップの技術という新しい風を吹き込んで、課題解決をしたり新たな価値を生み出していくことができないかなと。このような取り組みを通じて、どんどん色々な人が混ざっていけばいいなと思っています。

別府市
宮﨑

別府でもオンラインのコミュニティがあってですね、そこに800人ぐらい登録してるんですよ。たまにはオフラインでやろうってなって新年会したりもするんですが、その課題感としていつものメンバーになってしまう。
そういう状況で逆に企業誘致とかで別府に拠点を構えてくれるスタートアップや企業さんからしたら、なんかすごいありがたいみたいです、そういうコミュニティーがあると。行政が間に入って、運営してもらえる。県外から来た事業者さんも、地元企業と繋がれる。繋がれるというところは、すごいありがたいなと思ってもらえつつも、なかなかこうメンバーの新陳代謝が課題かなと感じています。
ちょうどAPU(立命館アジア太平洋大学)の中に社会連携という地域とつながる窓口ができたんです。そこと密に連絡を取り出してます。何かあったらセミナーあるよとか、情報連携から始めています。目に見える効果っていうところは、まだ見えてないんですけど担当レベルではもう常日頃から繋がって助かってます。

03. Japan Startup Selectionの特徴と開催意義

・毎年東京で開催する期待や効果
・他都市のスタートアップとの交流はあるのか?
・第12回JSSの見どころ
ほか

屋代

では最後にメインテーマであるJSSについて。いろんな人をまぜるとかってやっぱり東京っていうのは、どうしてもスタートアップ考えると、外せない場所になる。毎年これまで11回JSSをやってきて東京で開催する期待とか効果を福岡市さんにお聞きしたいです。

福岡市
松尾

ありがとうございます。やっぱこう、統計的に、もうスタートアップのほとんどが東京にいる中で、支援者と、あと元スタートアップというか、シリアルの人たちが東京に集積されている中で、福岡のスタートアップって結構いいじゃんみたいなものを感じてもらって、福岡に対する期待感を持って欲しいなっていうところで、年1回の東京とのタッチポイントづくりみたいなものはJSSに期待してるところですね。
でももうスタートアップイベントって、毎日のように東京でやってますよね。「他のイベントとは違うんだ」っていうところを打ち出して、どうやって埋没しないようにするのかっていうのが大事で。その際にJSSは、北は青森、南は鹿児島から特色あるスタートアップが一堂に集まるというのは、強みだと思っています。福岡市単独で東京でイベントすることもちろんあるんですけれども、福岡単独イベントって、福岡に興味ある人しか来ないから、そうじゃない「福岡に興味ない人」にも来てもらえる機会っていうのはありがたいなと思ってます。

別府市
宮﨑

別府というか、大分県にはVCがほぼいないんですね。だから資金調達したい、全国展開を視野に入れているスタートアップをJSSに連れていくんですよ。そこで、すぐに資金調達にはならないんですけど、そこで一定程度、VCさんとかとお話ができたりするんで、それがすごいありがたいなっていうふうに思ってます。

北九州市
瀬下

北九州市が単独で東京でイベントをやるってことは、ほとんどないんですよね。東京事務所とかがあるので、そこを使って、ちょっと小さくやるってことはあるんですけど、大きなイベントをやるってことがそんなにないです。なので、別府市さんと同じで大きいイベントを東京でできる機会を作っていただけるのはすごいありがたいなと。色々な自治体からのスタートアップが参加することで、参加者も興味を持ってもらいやすいですし、魅力的ですよね。

熊本市
野口

熊本市は去年まで単独で東京のCIC Tokyoでスタートアップのイベントをやらせてもらったんですけども、やはり単独開催ならではのリスクもあるなと感じていました。集客の部分だったり、テーマをどうするかだったり、全部自分たちでしっかり練らないといけないですし。もちろん、「熊本に興味があります」という人たちは来てくれるんですけども、どうしても仲間内でやってる感が出てしまって、東京という場所にしては、新しい刺激や出会いみたいな、やっぱ少なかったなあというふうに思ってます。で、このJSSに参加させてもらい、感じているのは、やっぱり広がりの部分ですね。
熊本も独立系VC1社もいなくて、資金調達の環境という点では課題感があります。JSSは、そういったVCの方達との出会いの場でもありますし、その点も魅力だなと思っています。
あと、熊本のスタートアップは、なかなか首都圏との接点が少なく、こういう機会で外に連れていくっていう。それで刺激を受けて、自社でここを頑張っていこうみたいな、いい機会になってると思います。

屋代

それでもやっぱりこのJSSの魅力というのは、各市区のトップが来ることですよね。これだけトップが集まるイベントってないですよ。トップが原稿どおりの発言ではなく、今頭の中にあるビジョンなどを言語化していく。こういった機会に触れることは、スタートアップにとってもメリットが大きいですよ。それを集客面や企業誘致の観点で見れば、やはり東京開催がベストなんだろうなと思います。

熊本市
野口

毎年イベントで色々とトップの話を聞いていると、トップしか見えてない世界ってあるんだなって思いますね。

屋代

という流れで最後に、2026年1月26日開催の第12回目のJSSの魅力や特徴を松尾さんからお願いします!

福岡市
松尾

ありがとうございます。スタ協は、本当に会員自治体さんそれぞれ個性的なんですよね。そして各自治体からの参加スタートアップも、自治体の個性に紐づく特色あるスタートアップさんなんです。だから、新たにスタートアップ支援を始めたい自治体さんにとっては、絶対に何かした参考になる要素とか、ロールモデルとなるような取り組みが見つかるんじゃないかと思います。
また普段なかなかリアルで会うことが難しい、地域で活躍するスタートアップの見本市にもなっているので、事業会社さんとか投資家さんにとっても有意義な場になっているかと思います。
地域の個性の掛け算を最大限魅せて生かせるように、最後までしっかりとイベントを練り上げて、開催準備をスタ協全員で頑張っていきたいなと思ってます。皆様ぜひ当日ご来場くださいませ!

全員

お待ちしてま~す!

チャレンジに失敗は付きもの・・・誰しもが失敗をしたくないと思います。しかし、大きな課題や未知なる領域では、誰かが挑戦しなければ道は拓けません。人口減少、少子高齢化、環境の変化による自然災害など、私たちが直面する課題や危機は日常化しつつあります。
日本全国の地方自治体の中には、日々その困難に立ち向かい、そして立ち向かう挑戦者を評価し応援しているところが増えてきています。スタートアップ都市推進協議会はそのひとつで、自治体・経済団体が連携し、地域の強みを活かしたスタートアップ支援の取り組みを全国に広げています。
“市役所”という住民に一番近く公的な場所だからこそ、多様な挑戦者を応援し、全国的な連携も可能になります。

スタートアップが挑戦し、成長し、世界へ飛び立つ旅の物語
“つくばスタートアップジャーニー”
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