INTERVIEW インタビュー記事

研究と起業のあいだに“近さ”という支援を。TCIとスタパがつなぐ挑戦の循環

株式会社つくば研究支援センター ベンチャー・産業支援部石塚 万里(いしづか まり)

1986年筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン専攻卒業。株式会社つくば研究支援センターに入社後に経理・財務を学び、2000年頃より本格的にインキュベーション事業に携わる。その後25年に渡って数多くのディープテックベンチャーを支援。2006年創業・ベンチャー国民フォーラムVenture Award2006起業支援部門奨励賞受賞。2018年および2024年にILS Awardアドバイザリーボード最優秀者表彰。2021年よりつくばスタートアップパークにて学生の起業も支援。2024年より、紫峰デザインラボを立ち上げ、ベンチャー企業のWEBページをはじめ企業のデザイン支援を個人事業として展開。

株式会社つくば研究支援センター ベンチャー・産業支援部池田 衣澄(いけだ いずみ)

1989年生まれ。筑波大学にて、看護師・保健師の国家資格を取得。精神科看護師を経て、大学院では産業保健分野(メンタルヘルス)を研究し、2016年に修士号を取得。子どものメンタルヘルスの重要性にも着目し、博士課程は共生教育学分野に進学。2019年には大学教員として、科研費を得て研究活動をしていたが、出産・育児を機に離職し、博士課程も単位取得退学。その後、産業保健師を経て、「未知の分野で、ゼロから自身の価値を試したい」との思いから、株式会社つくば研究支援センターに入社。現在は、医療と教育の双方に根ざすハイブリッドな専門性を活かした支援に取り組むほか、アントレプレナーシップ教育事業にも力を注いでいる。

株式会社Palames 代表取締役社長熊谷 充弘(くまがい みつひろ)

2000年生まれ、奈良県出身。中学時代からWebサイトや各種デザインを制作。高校時代の研究では、測定装置の基盤設計やプログラム等の開発から行い、文部科学大臣賞を受賞。筑波大学への進学を機に、土地勘のない地域での飲食店探しの難しさを解決するため、メニュー探索サービスを開発・運用。3年間の試行錯誤を経て、課題やイベント領域でのニーズを感じ、同サービス(dokoiko)をイベント情報プラットフォームとしてピボット。2023年、筑波大学発ベンチャーとして「マップとデータの力で、未来の体験を可視化する。」をミッションに掲げる株式会社Palamesを設立。代表取締役を務め、エンジニア兼デザイナーとしてデジタルマップなどの新機能開発や、新規顧客へのサービス導入を推進している。

株式会社Griteen 代表取締役社長多田 遥香(ただ はるか)

2002年兵庫県生まれつくば市在住。中学1年からプログラミングに触れ、高校時代に3万チームが参加するロボットコンテストの世界チャンピオンに。筑波大学の工学システム学類へ進学し、飛び級をして3年間での早期卒業を達成。同大学院に進学し、研究活動に励む中、シリコンバレーへ留学。留学での経験から日本の理系分野の女性進出に課題を感じ、プログラミング教育をさらにプログラミング教育をより多くの女性に広めたいという思いから、株式会社Griteenを設立。代表取締役として、日本で唯一の“女の子特化型”オンラインプログラミングスクールを運営している。全国の小中高生が受講しており、学校の部活動としての導入や、企業の福利厚生プログラムとしてのワークショップも展開している。

株式会社しびっくぱわー 代表取締役社長堀下 恭平(ほりした きょうへい)

1990年熊本市生まれつくば市在住。東日本大震災を機に筑波大学2年次にコミュニティカフェを創設運営。下妻市や水戸市、横浜市などの商店街活性化に参画した後、行政計画策定支援で最初の起業し以降8社起業経営参画。全国60自治体以上の総合計画や総合戦略などの行政計画を策定。まちづくりとスタートアップ支援を中心に年間1,500件以上のイベント企画運営登壇。2016年あらゆる挑戦を応援する場Tsukuba Place Lab創業、2021年つくばスタートアップパーク運営、2024年常陸多賀駅前 晴耕雨読を事業承継し経営。令和元年度茨城県知事表彰 新しいいばらきづくり表彰 産業振興 受賞。

聞き手:株式会社しびっくぱわー 代表取締役社長 堀下恭平
※本インタビューでは、スタートアップとベンチャーを同義語として扱います

“筑波研究学園都市つくば”には、150を超える研究機関と多様なスタートアップが共存し、研究とビジネスが交わる独自のエコシステムが育まれています。しかし、研究者や学生が“起業”へと踏み出す道のりは、制度・文化・スピード感のいずれにおいても、いまだ容易なものではありません。
そんな「研究と起業のあいだ」をつなぐ存在として、長年にわたり地域の挑戦者を支えてきたのがつくば研究支援センター(TCI)です。近年は、つくばスタートアップパーク(スタパ)の運営も担い、創業初期の伴走支援から実証・成長フェーズまで、一気通貫の支援体制を築いています。
今回は、TCIのインキュベーション・マネージャー石塚さんと池田さん、そしてスタパを拠点に活動する入居スタートアップの皆さんにお話を伺いました。“近さ”をキーワードに、つくばの起業支援がどのように変化し、挑戦の循環を生み出しているのかを探ります。

01. “近さ”という支援。TCIが築く挑戦者に寄り添う環境

堀下

本日はよろしくお願いいたします!

石塚
池田

よろしくお願いいたします!

堀下

今日はいつもの“現場モード”でお伺いしていきたいと思います。TCIさんとはスタパ運営をご一緒して5年目、日々の相談や企画、現場の同じ景色を見てきました。改めてこの5年で確信となったTCIさんのキーワードは「近さ」だと思っています。まずは、TCIの支援スタイルを石塚さんから聞かせてください。

石塚

私たちは、起業家の思いに寄り添うことを大事にしてきました。時には研究者の兼業申請からお手伝いを始めることもあり、定款作成、法人登記、その後の税務や社会保険、雇用の手続きまでを一気通貫で支援します。そしてその間にたくさん話をして、事業の立ち上げを起業家目線で考え伴走します。書類の山に向き合うとき、進む道に迷うとき、横に“人”がいることがいちばん効くんです。

堀下

分かります。創業初期は「分からない」が連続しますよね。専門家の見解も要るけど、まず“気軽に声をかけられる人”がいるかどうかで、進み方がまったく違う。

石塚

ええ。だから「顔が見える関係性」をつくるところから始めます。ちょっとした相談や、手続きの詰まりを一緒にほどく。その積み重ねが、結局はいちばんの推進力になるんです。

堀下

大学や研究者の起業でも、制度と現場の“すき間”を埋める伴走が効いていますよね。兼業届や学内調整、学外連携の段取り…この辺りは、私たちも頻繁にご一緒しています。

石塚

研究者や学生のみなさんは最初の段差に躓きがちです。そこで「一緒に越えましょう」と並走する。制度と現場のはざまを歩幅合わせで進むのが私たちの役割だと思っています。

堀下

その“近さ”の文化は、スタパにも色濃く流れ込みました。池田さん、インキュベーションの前線に立って感じることは?

池田

スタパはTCI支援の“入り口”でもあります。ここで出会って、話して、まず一歩を踏み出す。そこからプロトタイプや実証に進むフェーズにバトンを渡す…。行き来しながら挑戦が循環する状態ができあがります。

堀下

たしかに。スタパには“ちょっと話したい”が許される空気感がありますよね。そこで火がついたら、一気に温度を上げていく。

池田

私は日常的にスタパの現場に立ち、話しかけられやすさを保つことを意識しています。対話の最短距離にいると、状況が見えやすくなり、本当に必要な支援を的確に捉えることができます。そのため、市の補助や実証枠、研究機関との連携、そして多様なネットワークへとシームレスにつながりやすくなります。

堀下

取材日も、写真撮影の合間に入居起業家のみなさんと雑談になりましたよね。「家での登記が難しく詰んだ」「夜も作業できて助かった」みたいな“生活感ある声”がぽんぽん出てきて、場の効能をあらためて実感しました。

石塚

そういうリアルな困りごとほど、“近さ”の解像度がものを言います。登記住所、郵便の受け取り、ミーティング場所、雇用のこと、大学の兼業届…ひとつずつ潰していくと、自然と前に進んでいく。この中で信頼関係をつくることで、もっと深い事業推進の話もでき、本音を聞くこともできる。

堀下

そして進んでいくと“人に会う”。分野違いの起業家が隣で成長していく姿や、偶発的な出会いが刺激になる。これは、現場にいないと拾えない価値ですね。

池田

はい。スタパでは「立ち話から始まる」ことも多い。そこで火種ができたら、TCIの“腰を据える器”に送って、プロトタイプや実証に移す。二拠点を“入口と器”として使い分けるから、熱が逃げません。

堀下

“熱を逃がさない導線設計”。まさにこの5年で一緒に磨いてきたところです。イベントで露出→相談→試作→実証→次の場づくり…とループが回る。途中で止まりそうなとき、伴走者が横を並んでくれる安心感がある。

石塚

その安心感は、雑務まで含めた伴走から生まれます。安心感の中で起業家はコアな意思決定に集中し、安心のできる相手になることで、コアな意思決定の相談でも私たちが頼られるようになります。

堀下

研究×起業の文脈では、社会実装の“受容性をどう上げるか”も論点になります。スタパの現場では、教育・地域・企業のファミリーデーなど、生活圏と技術をつなぐタッチポイントを増やしていますが、ここもTCIと継ぎ目なくやれています。

池田

ええ。小さな体験の場を重ねていくことで、実証への理解が深まります。そこから連携先が広がり、資金・人材・設備が回り始める。挑戦は“点から線、線から面”に変わります。

堀下

まとめると、スタパは“話せる入り口”、TCIは“腰を据える器”。2つを人の近さでつなぐのが、このまちのやり方。結果として、挑戦が循環し続けるエコシステムが立ち上がってきた、ということですね。

石塚

はい。「研究シーズの事業化」と「研究者の起業」、そしてそれを起点にしたこの街の発展を、この街にいる私たちが(距離的な近さをもって)、同じ思い(気持ちの近さを武器に)力強く伴走する。それが私たちTCI×スタパの変わらない軸です。

02. 入居スタートアップが語る“助かったこと”。場が生む化学反応

堀下

ここからは、スタパに入居するスタートアップを代表してお二人にお話を伺います。
デジタルマップでイベントを見える化するイベント情報プラットフォーム「dokoiko(ドコイコ)」を展開する株式会社Palames 代表取締役社長 熊谷 充弘さん。そして、地域と学校と子どもたちをつなぐプログラミング教育を手がける株式会社Griteen 代表取締役社長 多田 遥香さんです。

堀下

まずは熊谷さんから。スタパとの出会いを教えてください。僕の記憶では、ほぼ毎日いましたよね(笑)。

熊谷

いましたね(笑)。夜も明かりが消えないスタパの常連でした。イベントやマルシェの企画に関わっていると夜中まで作業になることが多くて。スタパは夜も使えるし、石塚さんらスタパのスタッフの皆様や市役所の方も近くにいるから、何か詰まったらすぐ相談できる。「今この企画、ここで止まってるんですけど」って話を、その場で投げられるのがありがたかったですね。

石塚

ほんとに(笑)。私たちが帰る頃にはまだ熊谷さんが仕事をしていて、なのに翌朝来ると、すでにいる。夜遅くまで作業して、そのまま朝まで仕事していた日もあったくらい。まさに“スタパに住んでる”状態でしたね。

熊谷

そうでした。スタパは作業場というより“拠点”。現場で拾った課題をそのままプロダクトに反映できるスピード感が出せるんです。テクノロジーって“使われてナンボ”なので、現場にいないと磨けない。あの“いつでも誰かがいる”空気感が、うちにとっては支援でもあり、燃料でもありました。

堀下

Palamesが手がける「dokoiko」は、地域イベントの情報を“リアルタイムで見える化”するアプリですよね。開発の原点は?

熊谷

地域イベントって、どこで何が開催予定かはもちろんですが、行ってみても「何がどこで起きてるのか」が意外と分からないんです。ステージの進行や出展情報も紙のマップや放送頼りで、せっかくの魅力が届かない。そこで、デジタルマップで今の会場の様子をリアルタイムに表示し、出展者情報・混雑状況・ステージ進行までを一元化したのが「dokoiko」です。現場の熱を“伝わる形”で残したかった。それが最初の一歩でした。

池田

熊谷さんは現場主義ですよね。イベントの主催者の横で一緒にテント張って、当日の導線を見て、そこで得た気づきをすぐアプリに反映する。「現場の声→即改善」のスピードは、まさにスタパの文化そのものです。

熊谷

ありがとうございます。スタパでは誰にでもすぐ話しかけられる距離感がある。「この仕様どう思います?」とか、「こんな連携できますか?」をその場で投げられる。TCIや市の方々と近い場所にいるからこそ、試して→直して→また試す、の繰り返しが止まらなかったですね。

堀下

まさにその通りですね!ありがとうございます。
では次に多田さん。Griteenの活動は、教育現場と地域をつなぐ“新しい形の学び”ですが、最初の立ち上げは苦労の連続だったとか。

多田

はい、最初は本当に何もかも足りませんでした(笑)。
登記しようにも「自宅の住所は出したくない」「賃貸はNG」と言われ、物理的な場所すらなくて。お金も場所もない中で「どうすれば会社をつくれるんだろう」と途方に暮れていたときに、スタパを知ったんです。

堀下

まさに“助かったこと”の代表エピソードですよね。

多田

本当にそうです。スタパでは「ここなら登記できますよ」「筑波大生なら利用料が半額になります」と教えてもらえました。学生起業家にとって20万円単位の補助や助成は本当に大きい。「まだ諦めなくていい」と思えた瞬間でした。

石塚

スタートアップパークでは、起業家の“最初の一歩”を全部一緒に歩くようにしています。必要な知識のレクチャーから始まり、手続きに進み、「設立おめでとう」で終わらず設立後の事務にすすむ。そして、その後も近くで成長を見守り、必要な時は伴走に入るという関係が続きます。

多田

まさにその通りで、“一緒に行きましょう”と並走してくれる人がいるだけで、重さが半分になるんです。

堀下

Griteenは今、学校を使ったプログラミング教育にも踏み込んでいますね。現場に入るまでの壁も大きかったのでは?

多田

はい。当初は「教室を貸すことはできません」とお断りされることも多く、学校の中に民間が入るハードルを痛感しました。ですが、市の社会実装事業に採択いただき、多方面で理解を広げるための調整を一緒に進めてくださる方々のお力もあって、「地域の子どもたちの学びを支える新しい地域クラブ活動」として受け入れていただけるようになりました。
今では、地域の保護者の方々を講師として育成し、学校施設を活用した探究×プログラミングの部活動を実施するなど、地域ぐるみの学びの形へと広がっています。

池田

普通、企業が「保護者を先生に」と言っても、なかなか成立しません。でも多田さんは、関わる人たちが安心して動ける関係や実績を一つひとつ築いていった。まさに“近さ”で信頼を生むやり方ですよね。

石塚

この難しい問題に挑み、一つずつ突破しいるのが、Griteenのすごいところです。

堀下

お二人の話を聞いていると、スタパという“場”が単なる施設ではなく、挑戦をつなぐ媒介になっているのを感じます。

熊谷

本当にそうです。スタパは、ただのオフィスではなく“街のラボ”。誰かの挑戦が隣で進んでいて、困ったらすぐ手が伸びる。その環境が、僕たちを前に押し出してくれました。

多田

私もまさに同じです。最初は何もわからなかったけれど、相談すれば必ず誰かが答えてくれる。その安心感があったからこそ、挑戦を続けられました。

石塚

そうした“近さ”は、スタパの文化だと思っています。支援する・されるという関係ではなく、“一緒に考える仲間”として関わる。その積み重ねが、信頼やスピードを生んでいるんです。

池田

スタパで火がついた挑戦が、さらに新しい事業へとつながっていく。挑戦の“化学反応”がまちの中で生まれ、それがまた次の挑戦を呼ぶ。そんな循環をこの数年で確かに感じています。

堀下

まさに、“助かったこと”の先に、“誰かを助ける挑戦”が生まれているということですね。貴重なお話をありがとうございます。次の第3章では、その挑戦の循環がこの先どう広がっていくのか──つくばというまちのエコシステムの未来について伺います。

03. “挑戦の循環”が広がるまちつくばのスタートアップエコシステムの未来

堀下

TCIとスタパを中心に、“近さ”の支援が挑戦を循環させてきたことが見えてきました。
この動きが今後、つくばというまち全体にどんな広がりを見せるのか。ここからは少し未来の話をしていきたいと思います。

石塚

TCIの支援は、もともと「研究成果の社会実装」を後押しするところから始まっています。研究者の起業も研究成果の社会実装の一つとして支援がはじまりました。最近、特にスタパの運営でしびっくぱわーさんとご一緒するようになってからは、地域課題や教育、文化など、支援する範囲も目的もどんどん広がってきています。
一方で、スタパでは若い起業家が次々に生まれており、はじめは小さな挑戦であってもどんどん事業を拡大している。特に熊谷さんや多田さんの取り組みは、企業・行政・研究機関をまたいでつながりを拡大しています。ほかにもこういったことがたくさん起こっており、まち全体が“実験都市”として動き出している感覚があります。

堀下

まさに“実験都市”ですね。研究と生活が混ざり合うつくばの特性が、挑戦の多層性を生んでいるように感じます。

池田

そうなんです。今は「研究成果をどう社会に出すか」という1本の線だけではなく、「地域の暮らしをどう良くするか」「教育現場でどう使われるか」「市民がどう関わるか」という複数の線が交わっている。その交点にスタートアップがいるんです。TCIとスタパは、その“交わりを増やす仕掛け”として機能していると感じます。

堀下

スタパイベントやコミュニティでも、分野をまたぐ出会いが増えてきた感覚が確かにあります。AI×教育、農業×デザイン、モビリティ×福祉…そんな組み合わせが日常的に生まれている。

石塚

はい。スタートアップって、分野の“はざま”で新しい価値を生み出すものだと思うんです。だから、私たちがやるべきことは「それぞれの挑戦を同じ地図に載せる」こと。異分野の人たちが、“自分にも関係あるかも”と思える可視化が必要なんですよね。スタパはその“地図の更新”が日々起こっている場所です。

熊谷

それ、すごくわかります。うちの「dokoiko」も、地域情報やイベントという“点”をどう“面”につなげるかがテーマなんですけど、スタパやTCIのネットワークにいると、全く違う業界の人が「それ、実証できるよ」と声をかけてくれる。まさに“地図が重なる”瞬間があるんです。

多田

私も同じです。教育って、実は社会のいちばん広いフィールドなんですよね。スタパでは研究者も企業の方も「子どもたちにどう伝えるか」を真剣に考えてくれる。だから、Griteenの取り組みも、教育だけじゃなく地域づくりの文脈で進化していきました。

堀下

まさに、挑戦がリレーのようにつながっていく感じですね。TCIやスタパが“走り出しのスタートライン”になって、次の走者にバトンが渡る。

池田

そう思います。「起業家支援=出口支援」ではなく、「スタート地点の設計」だと捉えています。どんな挑戦もスタートからの“伴走”があれば続けられる。その小さな成功体験がまた次の挑戦者を呼び込む。支援のリレーが生まれているんです。

石塚

つくばは、研究者も企業も行政も、分野を越えて連携することに前向きなまちです。新しい取り組みや実証を始めても、「とりあえずやってみよう」という雰囲気がある。そうした文化が、挑戦を次につなげてきた原動力だと思っています。私たち支援機関としては、その挑戦を受け止める仕組みを止めないこと、そして現場の声をもとに常に支援をアップデートしていくことを大切にしています。

堀下

まさにその“前向きな実験文化”こそ、つくばらしさですよね。TCIとスタパがその土台を支え続けているからこそ、次々に新しい挑戦者が生まれている。僕自身も、その連携の中で現場をともに動かす一人として、誇りを感じています。
それでは最後に、これからのつくばに向けて一言ずつお願いします。

石塚

挑戦する人が、挑戦を続けられるまちでありたい。制度も設備も人の関係も、“近さ”で支える文化をこれからも大切にしていきたいです。

池田

挑戦の温度が高いほど、まちは元気になります。TCIもスタパも、その熱を逃がさず、次の挑戦者へと渡していきます。

堀下

ありがとうございました。“研究と起業のあいだに近さという支援を置く”──TCIとスタパが紡ぐ挑戦の循環は、これからもつくばのまちを、誰もが新しい一歩を踏み出せる“実験都市”へと進化させていくことでしょう。

研究、教育、行政、そして市民。それぞれの立場から始まった挑戦が、スタパやTCIを介して交わり、また次の挑戦を生み出していく。つくばのエコシステムは、そんな“人と人の近さ”から生まれる連鎖で育まれています。

誰かの「助かった」が、次の誰かの「やってみよう」に変わる。その循環を支えるのは、制度でも設備でもなく、人と人がつくる空気のあたたかさです。TCIとスタパがともに築いてきた“挑戦を受け止める仕組み”は、これからも進化し続けるでしょう。
そして、その現場には今日も、新しい挑戦者たちの姿があります。

スタートアップが挑戦し、成長し、世界へ飛び立つ旅の物語
“つくばスタートアップジャーニー”
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